【COX】再び試されるサム・アルトマン…B2Cが揺らぐ中、ナンバー2も離脱

OpenAIのアプリケーション部門最高経営責任者(CEO)であり、事実上のナンバー2とされてきたフィジ・シモが9日(現地時間)、完全辞任を発表した。2026年4月から慢性疾患の再発により医療休職中だった同氏は、社内通知を通じて、回復には当初の予想よりも長く複雑な時間が必要だとし、パートタイムのアドバイザーへ移行すると明らかにした。原因は、2019年に診断された体位性頻脈症候群(POTS)の深刻な悪化によるものだ。
シモは2025年5月、InstacartのCEOからOpenAIへ移り、新設されたアプリケーション部門CEOに就任した。当時、最高執行責任者(COO)のブラッド・ライトキャップ、最高財務責任者(CFO)のサラ・フライアー、最高製品責任者(CPO)のケビン・ウェイルがいずれもシモに報告する体制へと再編され、サム・アルトマン最高経営責任者はリサーチ、コンピューティング、安全部門に専念するため、一歩引いた立場となっていた。事実上、同社の事業・製品ライン全体を統括するポジションだった。シモが2026年4月に休職して以降は、グレッグ・ブロックマン社長が製品部門を代行してきた。アルトマンは2023年11月、取締役会によって突然解任され、そのわずか5日後に復帰した前例のない事態を経験した人物である。今回のナンバー2の離脱により、同氏は再びリーダーシップを問われる局面に立たされた。
タイミングも良くない。シモの離脱そのものは健康上の問題によるものであり、事業不振の結果ではないことは明確にしておく必要がある。両者は時期が重なっただけであり、因果関係があるわけではない。それでも、そのタイミングが重なったという事実自体がOpenAIにとっては負担となる。TechCrunchによると、一般消費者向けChatGPTの成長率は2025年末から目に見えて鈍化し、社内の売上目標にも届かなかった。OpenAIがコーディングツール分野へ重点を移していることも、こうした背景と重なって見えるが、TechCrunchは、この分野でもOpenAIは依然としてAnthropicに後れを取っていると指摘した。消費者向け事業を主に担当してきたシモが完全に退くことで、OpenAIは自社の弱点と指摘される領域でリーダーシップの空白を抱えることになった。
これは、OpenAIが新規株式公開(IPO)を検討しているとの見方が出ている時期とも重なる。業界ではシモを、OpenAIが上場後にさらに大きな役割を担う有力候補と評価してきた。同氏が完全に退いたことで、アルトマンは新たな後任を探さなければならない立場となった。OpenAIが上場準備を進める局面で事業統括のポストが空席となることは、投資家に組織の安定性への疑問を抱かせるには十分だ。
もっとも、OpenAIの対応は迅速かつ節度あるものだ。シモの業務はすでにライトキャップ、フライアー、ウェイルら既存の経営陣に分散されており、短期的な業務の空白はそれほど大きくない。アルトマンもXへの投稿でシモへの感謝を表し、関係維持に努める姿勢を見せた。健康問題による離脱である以上、競合のAnthropicなどがこの隙を積極的に突く大義名分も乏しい。本当の試練は今ではなく、後任人事と消費者向け事業の立て直しという中長期的な課題から始まる。
結局、注目すべきポイントは二つに絞られる。OpenAIが消費者向け事業の成長鈍化という構造的な問題を新たなリーダーシップで解決できるのか、そして上場を前にこの空白をどれだけ早く埋められるのかという点だ。ナンバー2の不在が一時的な人事上の問題で終わるのか、それともOpenAIの事業再編の時計を遅らせる要因となるのかは、後任選びのスピードが判断材料になるとみられる。







